感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第46回 2010/03/02   


  原 句  凍解くる北の大地の大欠伸

 「凍解く」は、春の季語。北国の厳しい寒さがようやくゆるむことをいいます。
 この句は、北海道の春に思いを馳せて、まるで大地が大欠伸をしたようだ、と考えたものでしょう。実際に旅行にいったのかもしれません。気持ちのよいスケールの大きな句です。
 ただ、いっぱんに北海道を「北の大地」と呼び習わしていますが、それをそのまま俳句の言葉としてつかった場合、どんな印象になるでしょうか。すこし陳腐に感じられないでしょうか。
 既成の言葉をなるべく避けた方が、一句は新鮮になると思います。この句の場合もいっそのこと普通に「北海道」と言う方がいいように思いました。
 けれど、それでもこの擬人法が気になります。擬人法そのものが常識的で陳腐になりやすい手法なのです。
 まずは、作者自身が大地を踏みしめてうーんと伸びをしてみましょう。そのとき、大地もまるで大欠伸をして目覚めたような気がした、そんな一句にしてみてはいかがでしょうか。
  添削例  大欠伸して凍解くる大地かな

 




 水平線

(c)kyouko ishida
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