NO84 平成21年9月15日 片山由美子 |
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【火の俳句】第4回 近刊句集から |
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火を詠んだ俳句、あるいは火にかかわることを詠みこんだ俳句を探しながら句集のページを繰ってゆくのもなかなか面白い。案外多いものなのである。手元の句集から作品を紹介したい。 今井杏太郎『風の吹くころ』 菜の花の沖いさり火のともる夜 火の山のけむりが下りてきて夏に 蝉殻を焚けばしづかに燃ゆるなり 手花火の草に沈みてゐたる夜 人の夜を離るる白い花火かな 夕闇のうつくしかりし焚火かな 焚火より離れて村へ帰る風 夜の明けるころ狐火は水のやう 狐火の枯れてさびしうなりにけり 狐火のあかりのともる山の宿 埋火の泣くといふ夜はしづかなり 焼鳥のけむりのいろも酔のなか タイトル通り風のような、あるいは空気のような俳句を作る今井氏だけに、火の句は少ないのではないかと予想していたが、その割には火の文字が目についた。抜き出してみると、それぞれ作者の個性があきらかで、独特の「火の俳句」になっていて興味深い。 柴田佐知子『垂直』 胸の火も放ち螢の夜なりけり 列なして狼煙山より曼珠沙華 狐火も混じりて禁裏炎上図 香煙に顔を入れたる大暑かな 篝火に道の伸びゆく虫送り 抛り込む木の根が焚火押しつぶす 貝合せ煙のやうな雨が降る 山焼いて男大きく戻りきし 二の膳に烏賊火が高く揃ひけり 広げたる袖に不知火入れてきし 炉話のうしろより手が伸びてきし 狐火を連れてきさうな女なり 端は火を鎮めつつ阿蘇焼きにけり 噴煙を見し夜のすさぶ桜鍋 阿蘇に立つ夜の噴煙きりぎりす たちまちに火の輪飾となりにけり 火柱となりし殉教黍嵐 山焼の窪みより火の走り出づ 火を囲む海女のけぞりて笑ひけり 柴田さんは昭和二十四年生れの福岡在住の俳人。九州の女性らしい激しさもまた魅力のひとつである。 |
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(c)yumiko katayama |
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