いしだ |
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第1回 2009/02/01 |
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原句 鶺鴒の水面叩けり冬の川 鶺鴒は秋の季語になっていますが、留鳥なので一年中見られる野鳥です。ことに冬の川ならば、遮るものもなく、よく観察できたでしょう。鶺鴒のことを「石叩き」とも呼びます。尾を上下に振って、まるで石ころだらけの川原を叩いているように見えるからでしょう。 さて、この「水面」は冬の川の水面ですから、思い切って省略した方が、景が浮かびやすくなるのではないでしょうか。水嵩が減った冬の川を、チチッ、チチッと鳴きながら飛び、石の上に降りては尾を振るその姿が想像されると思います。 添削例 鶺鴒の叩いてゐたる冬の川 原句 如月や夜来の雨の樹にやさし 叙情的な、好感の持てる句です。ただ、全体に散漫な印象があります。なぜでしょう。この句は上五で切字「や」を使って大きく切り、下五でもう一度「やさし」と終止形にして切っています。このために一句は二つのことがらに分かれ、上五での切れが軽くなってしまったのでしょう。つまり、詠嘆も浅くなってしまったのではないでしょうか。 また、「樹にやさし」と言ったのは、作者の感性ですが、俳句は安易に感情を表す言葉を避けた方がよいのです。どうしても説明になってしまい、読者の想像を制限してしまうからです。 添削例では、夜来の雨が木々を濡らしたという情景に「如月や」の感慨を取り合わせました。下五を連用形にして、上五の切れを強くしたオーソドックスな形です。 添削例 如月や夜来の雨に樹々濡れて 原句 万年橋に早春の雲動かざる 上五の固有名詞に「に」という助詞を入れています。不要でしょう。俳句は文章ではないからです。 それでも字余りですが、上五の字余りはさほど気になりません。「万年橋」と重々しく名詞切れになって、当たり前だけれども万年橋も不動の感じを強めます。そして身の引き締まるような春寒の感じもしてきます。 添削例 万年橋早春の雲動かざる |
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