いしだ |
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第2回 2009/02/08 | ||||
原句 若柳右に左に風まはす 「若柳」とは青々と芽吹いた柳のことです。芽吹きの美しさを讃えて、「柳」は春の季語になっています。 この句は枝垂れ柳の枝が風に吹かれている様を描いたもので、上五を体言で強く切り、下五を動詞の終止形で軽く止めた形です。「柳が風をまわしているようだ」という作者の発見があるのにもかかわらず、かえって物足りない気がしてしまうのですが、なぜでしょう。 この句では、若柳という季語は強調されていますが、中七以降の描写が取って付けたように軽い表現になっています。若柳の様子の説明のままに終わってしまっているのです。 実は、柳の木が「風まはす」というのは擬人法といって一種の比喩ですから、もともと説明的な表現になりがちなのです。もう少し客観的になって景を描写してみましょう。また、上五の季語を生かし、余韻を響かせるためには、下五を連用形にする方がよい場合が多いので、この句ではそうしてみます。 作者の見たのはただこれだけのことだったはずです。面白くありませんか? でもはじめはそれだけでよいと思います。その分、季語の若柳の嫋々とした美しさだけが見えてくるからです。 添削例 若柳右に左に風とほり 原句 梅の香の満ちたる坂の刻惜む 作者はおそらくどこかへ向かうところで、梅の香に心を奪われ、坂道の途中で足をとどめているのでしょう。心情がよく伝わってきます。 ただ、この形ですと、下五の「刻」という短い一言を上五・中七が修飾している形になりますから、一句の調べが不安定な感じがします。 軽く切ってみましょうか。切字の「や」は作者の感動を伝えて一句にひろがりをもたらします。 また、「たる」はこの場合、過去に起こったことが今も続いている状態で、このままでもいいのですが、次のようにするともっと臨場感が出ます。参考までに。 添削例 梅の香の満ちくる坂や刻惜む 原句 椅子ひとつ寒明の街喫煙所 都会の情景の中に寒明の季節感を見出した句です。椅子が一つ置いてあるだけの喫煙所。思い浮かべた景に中に、一服する人物がいてもいなくても、そこからは街の風景が広がってゆきます。 ただ、一句が三つの体言で切れ切れになっているのが残念です。調べをととのえるために、省いてもよさそうな体言を探してみます。椅子が一つだけ置いてあって、そこが喫煙所になっているというのが非常に具体的で、読者の頭の中にも映像を結びやすいと思いますので、ここを生かします。 添削例 寒明や椅子一つ置く喫煙所 |
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