「絆」―家族で楽しむファミリー句会 第5回

実施日:2008年5月11日 場所:自宅


 こんにちは、佐怒賀家です。今回は自宅での「母の日」句会の様子をご報告致します。
 夕食後、17:00より開始。結果は次の通りです。
 伸び放題に野薔薇の咲いて雨二日
 台形の庭の斜面の野薔薇咲く
 野良猫の猫撫で声やカルミヤ咲く
 浮生
(ふせい)てふ十把一絡(じっぱひとから)げが青葉
 艮
(うしとら)に我が里のあり青葉雨
 母の日の素甘
(すあま)の粉を掌にこぼす       直美(通称:おとう)

 手際よくタオルたたんで夏が来る
 休日に学生多くゐて青葉
 追ひ抜かれつぱなしで青葉道行けり
 イーゼルを立て校庭の樟
(くす)若葉
 青葉風吹き抜け午後の駐車場           由美
(通称:ままい)

 母の日のささくれだつた薬指
 青嵐木の葉も猫もかけていく
 長話夏の強風止みにけり
 まるまらぬたこ焼きこげて夏の夜
 家族句会香る新茶は六十度
 人混みのカーネーションは咲きすぎて
 乾かない新茶のしみの広がつて          琴美
(通称:ねね)

 汗ぬぐい走りに走る部活動
 ストレッチ仰向けで見る夏の雲
 折り紙で手紙に添えたカーネーション
 延びていく部活の時間夜半の夏          筑美
(通称:つう)
    

  選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎手際よくタオルたたんで夏が来る    由美子
       ○追ひ抜かれつぱなしで青葉道行けり   由美子
       ◎まるまらぬたこ焼きこげて夏の夜     琴美
       ○母の日のささくれだつた薬指       琴美
       ○青嵐木の葉も猫もかけていく       琴美
       ◎ストレッチ仰向けで見る夏の雲      筑美
       ○汗ぬぐい走りに走る部活動        筑美

  由美子選 ◎母の日の素甘の粉を掌にこぼす      直美
       ○伸び放題に野薔薇の咲いて雨二日     直美
       ○浮生てふ十把一絡げが青葉        直美
       ◎まるまらぬたこ焼きこげて夏の夜     琴美
       ○母の日のささくれだつた薬指       琴美
       ○青嵐木の葉も猫もかけていく       琴美
       ◎ストレッチ仰向けで見る夏の雲      筑美
       ○汗ぬぐい走りに走る部活動        筑美

  琴美選  ◎浮生てふ十把一絡げが青葉        直美
       ○艮に我が里のあり青葉雨         直美
       ○母の日の素甘の粉を掌にこぼす      直美
       ◎手際よくタオルたたんで夏が来る    由美子
       ○追ひ抜かれつぱなしで青葉道行けり   由美子
       ◎ストレッチ仰向けで見る夏の雲      筑美
       ○汗ぬぐい走りに走る部活動        筑美

  筑美選  ◎母の日の素甘の粉を掌にこぼす      直美
       ◎青葉風吹き抜け午後の駐車場      由美子
       ○手際よくタオルたたんで夏が来る    由美子
       ◎まるまらぬたこ焼きこげて夏の夜     琴美
       ○家族句会香る新茶は六十度        琴美
 選句の後はいつものように録音をしながら意見交換を行いましたが、終了後にテープ(原稿を起こすのに便利なものですから、いまだにカセットレコーダーで録音しています)を再生したところ、テープが伸びていたのか、レコーダーが故障してしまったのか、なんと折角の意見交換がほとんど録音出来ていませんでした。「もう一度やり直そうか」との声もありましたが、翌日が月曜日ということもあり、今回はテープに頼らず、思い出しながら簡単にまとめることにしました。ご了承ください。

 まずは、つうの句についてです。

★「ストレッチ」の句は、情景がよくわかるし、つうが部活動を頑張っている様子が伝わってきました。「汗ぬぐい」の句も同じですが、「ストレッチ」の句に比べると少し大雑把な感じがしました。(ねね)

★ままいもねねと同じです。今回のつうは、結構頑張って句を作ったかなって感じがしました。「延びていく」の句は、「夜半の夏」の季語があってないんじゃないかと思います。(ままい)

☆「夜半の夏」っていうと、歳時記(角川書店版『合本 俳句歳時記』)には「夏の夜」の項に出ていて、「涼しさを恋うて寝るのが惜しまれる。おそくまで夜店歩きをしたり、戸外に出て納涼する人も多い。夜ふけてもまだ人影や人声がしている。短夜ほどつまった感じはなく、どこかゆとりがある。」とあるように、部活動が延びたぐらいの時間ではまだないし、そうであったとしても、「だから延びたんだ」っていう理由の説明になってしまうよね。(おとう)

☆良くわかんなかったんだけど、「どこかゆとりがある」って書いてあったし、かっこいいかなって思って使っちゃいました。(つう)

☆でも、ねねやままいも言ってたように、今日のつうは頑張ったんじゃないかな。おとうも「ストレッチ」の句はいいと思いました。「仰向けで見る」っていうところに作者の心の充実感みたいなものも感じられるし、「夏の雲」の季語も、真っ青な空と真っ白な雲のコントラストがとても爽やかでいいと思います。「汗ぬぐい」は、最後の「部活動」を言いたかったのかもしれないけど、「グラウンド」とか、その情景をはっきりと表現して、あとは、「きっと部活動でもやっているのかな」って読者に想像させたほうがよかったかな。(おとう)

 次は、ねねの句です。

☆つうは「たこ焼き」の句をとりました。この前夕食でやったばっかりだし、その時の様子がうまくまとまっていると思ったからです。「家族句会」の句は、さっきねねが「新茶は六十度で入れるのがいい」って言ってたのを聞いてたし、今のことを詠んでいたのでいいと思いました。(つう)

★ままいも「たこ焼き」の句が好きです。つうと同じように、この前たこ焼きを焼いたときのことがよくまとめられていると思いました。「まるまらぬ」とか、「こげて」とか、具体的に言っているのがいいと思います。「母の日の」や「青嵐」の句も素直に出来ていて良かったと思います。(ままい)

☆ねねも今日は調子が良かったのかなって思いました。「たこ焼き」の句は、つうとままいの言った通りです。良い句だと思います。「母の日の」の句は、言ってはいないんだけど、この「薬指」はままいなのかなって思うんだけど、「いつもたいへんだね、ありがとう」っていうねねの気持ちが伝わってくると思いました。(おとう)

★でも、本当はねねの指だったんだけどね。(ねね)

☆事実通り、この句を作者の指だとして鑑賞しても、その作者の指を通して「母の指」にまで気持ちがつながっているんじゃないかと思うよ。「青嵐」の句も面白いと思うんだけど、「木の葉も猫も」っていうと、風が強くて「みんな飛ばされていく」っていう感じになっちゃうから、「木の葉と猫が」って限定した方が焦点も絞れて、下五の「かけていく」の擬人化も効いてくると思うよ。「長話」は、「長話していたので風が止んだ」っていう説明になっちゃってるのかな。「新茶六十度」は面白いんだけど「香る」が要らなかったかな。「人混みの」も発想としては面白いと思う。「咲きすぎて」がやや気になったんだけど、でもこのままでもいいのかな。「乾かない」は、「新茶のしみの広がって」は好きだなあ。あとは上五に何を持ってくるかの問題だね。「乾かない」はなくてもわかるからね。もう一度考えて見るといいよね。(おとう)

 次は、ままいの句です。

☆つうは、「青葉風」の句を一番にとりました。理由は自分でも良くわからないんだけど、「午後の駐車場」がかっこよかったからです。「手際よく」の句は、ままいがいつもしていることで、こういう風に句にするのがすごいと思ったからです。(つう)

★ねねは、「手際良く」の句をとりました。句の中にその色は書いてないけれど、真っ白なタオルが浮かんできて、その白さが「夏が来る」っていうのととても合っているなあって思ったからです。「追ひ抜かれ」の句は、「追ひ抜かれつぱなしで」っていう口語的なリズムや響きが面白いと思ったからです。(ねね)

☆「手際良く」の句はねねの言った通りです。夏を迎えた作者の喜びが良く伝わってくると思います。「追ひ抜かれ」の句は、「先に行きたい人はどうぞご自由に」っていう作者の開き直りみたいな気持ちが、作者の前向きな生き方っていうか、心の余裕みたいなものまで感じさせ、「青田道」の季語も効果的だと思います。他の句は、単なる情景描写に終っているような感じがして、もう少し作者の姿が見えるといいのかなって思いました。(おとう)

 最後は、おとうの句です。

☆つうは、「母の日の」の句をとりました。「素甘」って、今食べたやつだよね。他の句はつうにはみんな難しくってわからなかったけど、この句はよくわかったのでとりました。(つう)

★たしかに、「浮生」とか「十把一絡げ」とか「艮」とか、何なのよって感じもするよね。(ままい)

★でも、ねねは、そういう難しい言葉を上手く使っているなって思って、「浮生てふ」とか「艮に」の句なんかをとりました。「浮生てふ」の句は、「浮生…はかない人生のこと」って注釈があったからわかったんだけど、なんかこの世全体がわあーっと青葉なんだっっていうのがすごく伝わってきました。「艮に」の句にも、「艮…北東のこと」って書いてあったんだけど、でも「北東に」だとぜんぜん違っちゃうなって思って、こういう言葉を使えるのがすごいなって思いました。「母の日の」は、つうと同じように良くわかる句でした。(ねね)

★おとうの句より、ねねの解説がすごいなって思っちゃたけれど、ままいは、「母の日の」がいいかなって思いました。難しい言葉も使ってないし、情景も良くわかるし、「素甘」のあのやわらかさと「母」のイメージが上手く重なっていて、その「粉を掌にこぼす」っていう具象性も良かったと思います。「伸び放題に」の句は、上五・中七はまあ普通なんだけれど、下五の「雨二日」が、こう来るかって感じかな。「浮生てふ」は、言葉自体は難しいんだけれど、でも言われてみればそうだよなあ、みたいな感じでとりました。「野良猫の」は「猫撫で声」が、作者は面白がってるみたいだけれど、そんなに効いてないんじゃないかと思いました。それと、「カルミヤ」って何。(ままい)

☆家の東側に今咲いてる、薄桃色の、小さな傘の集まったみたいな、あの花だよ。(おとう)

★そうかなあっては思ったんだけれど、でもとれないか。「台形の」の句は、この「台形」が効いているのかどうかわからなかった。「艮に」も、「艮」がどうなのかよくわからなかったのでとりませんでした。(ままい)



 以上、終了は20:30でした。
 

 さて、次回はいつになりますことやら。それではまた。


 
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