「絆」―家族で楽しむファミリー句会 第16回

実施日 2004年8月12日〜13日 場所 新潟



 こんにちは、佐怒賀家です。
 我が家の杏の古木もだいぶ蕾が膨らんでまいりましたが、皆さんのところはいかがでしょうか。

 今回も第14回に続き、昔の資料を引っ張り出し、2004年、夏の新潟での句会を報告させて頂きます。
 この時、琴美は高校1年生に、筑美は中学1年生になっていました。
  
[12日] 

 前脚の出て八月の蝌蚪(かと)二寸
 文様を背負ひし蟹の横走り
 観音の石段数へ切つて初秋
 城跡の初秋の蔭のやはらかき       直美(通称:おとう)

 送電線目で追へば湧く入道雲
 山がちになりて夏雲速さ増す
 歴代の藩主ずらりと秋初め
 初秋のお堀の水の満々と
 水鏡の(ふち)へとかじか()を寄する      由美子(通称:ままい)

 風呂上がり浴衣パリリと夜の風
 夏の夜の今日はクーラー消してみる
 川底の石コケはえてぬめりとす
 かじか見る上から見る下から見る
 城壁の岩ゴツゴツと夏盛り
 そうめんつるる高校野球はダブルプレー
 夏の夜寝顔の三つそばにあり       琴美(通称:ねね)

 沢ガニをさわるとお(ねえ)に怒られる
 怒られてかじかといっしょにぶっちょうずら
 ひさびさの川のぬめぬめよくすべる
 かじか取り川の流れにさからわず
 ゴツゴツと岩にぶつかり泥だらけ
 流されて必死につかむすべる石
 浅瀬ではゴツゴツぶつかるかじか取り    筑美(通称:つう)

  
   

 
選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎水鏡の縁へとかじか頭を寄する      由美子
       ○送電線目で追へば湧く入道雲       由美子
       ○山がちになりて夏雲速さ増す       由美子
       ◎かじか見る上から見る下から見る      琴美
       ○風呂上がり浴衣パリリと夜の風       琴美
       ○城壁の岩ゴツゴツと夏盛り         琴美
       ○そうめんつるる高校野球はダブルプレー   琴美
       ○夏の夜寝顔の三つそばにあり        琴美
       ◎かじか取り川の流れにさからわず       筑美
       ○沢ガニをさわるとお姉に怒られる       筑美
       ○怒られてかじかといっしょにぶっちょうずら 筑美
       ○浅瀬ではゴツゴツぶつかるかじか取り    筑美

  由美子選 ○文様を背負ひし蟹の横走り         直美
       ○城跡の初秋の蔭のやはらかき        直美
       ◎そうめんつるる高校野球はダブルプレー   琴美
       ○風呂上がり浴衣パリリと夜の風       琴美
       ○かじか見る上から見る下から見る      琴美
       ◎かじか取り川の流れにさからわず       筑美
       ○怒られてかじかといっしょにぶっちょうずら 筑美
       ○ゴツゴツと岩にぶつかり泥だらけ      筑美

  琴美選  ◎文様を背負ひし蟹の横走り         直美
       ○城跡の初秋の蔭のやはらかき        直美
       ◎山がちになりて夏雲速さ増す       由美子
       ○水鏡の縁へとかじか頭を寄する      由美子
       ◎かじか取り川の流れにさからわず      筑美
       ○怒られてかじかといっしょにぶっちょうずら 筑美

 
  筑美選  ◎観音の石段数へ切つて初秋         直美
       ○文様を背負ひし蟹の横走り         直美
       ◎山がちになりて夏雲速さ増す       由美子
       ○水鏡の縁へとかじか頭を寄する      由美子
       ◎かじか見る上から見る下から見る      琴美
       ○川底の石コケはえてぬめりとす       琴美
       ○そうめんつるる高校野球はダブルプレー   琴美


  


[13日・朝] 

 大鰍(かじか)の頭でつかち逃がしてやる
 秋簾半分巻いて湯の街は
 膝頭に川受け止めて鰍獲る
 座椅子蹴飛ばして湯街の夜の涼            直美

 瀬音だけの世界赤とんぼがよぎる
 列車二両編成で行く雲の峰
 鬼やんま川面たたいて旋回す
 行儀よく熟睡初秋の朝
 道いつぱいに村営バスが通る秋            由美子

 釣人の竿円を描き秋初め
 川底の泡ブクブクと夏日暮
 巨大かじかを今日は逃がしてやる気分
 秋の夜の夢をどこかに置き忘れ
 ヒリヒリと夏の背中のヒリヒリと
 鮎の歯のあと石についており 
 白昼のパラソル下から見る初秋
 秋初めデータのでない道を行く            琴美

 激流に押されながらも負けんとす
 カニ探す石ゴロゴロと秋初め
 ゆるやかな水面にはねる初秋かな
 激流にひやりと流れる赤ナマズ
 コイはねる足湯につかる秋初め            筑美

 
 
選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ◎道いつぱいに村営バスが通る秋      由美子
       ○瀬音だけの世界赤とんぼがよぎる     由美子
       ○列車二両編成で行く雲の峰        由美子
       ◎白昼のパラソル下から見る初秋       琴美
       ○川底の泡ブクブクと夏日暮         琴美
       ○秋の夜の夢をどこかに置き忘れ       琴美
       ○秋初めデータのでない道を行く       琴美
       ◎ゆるやかな水面にはねる初秋かな      筑美
       ○カニ探す石ゴロゴロと秋初め        筑美

  由美子選 ◎秋簾半分巻いて湯の街は          直美
       ○大鰍の頭でつかち逃がしてやる       直美
       ○膝頭に川受け止めて鰍獲る         直美
       ◎白昼のパラソル下から見る初秋       琴美
       ○釣人の竿円を描き秋初め          琴美
       ○川底の泡ブクブクと夏日暮         琴美
       ◎カニ探す石ゴロゴロと秋初め        筑美
       ○ゆるやかな水面にはねる初秋かな      筑美

  琴美選  ◎秋簾半分巻いて湯の街は          直美
       ○大鰍の頭でつかち逃がしてやる       直美
       ○膝頭に川受け止めて鰍獲る         直美
       ◎鬼やんま川面たたいて旋回す       由美子
       ○列車二両編成で行く雲の峰        由美子
       ◎激流にひやりと流れる赤ナマズ       筑美
       ○カニ探す石ゴロゴロと秋初め        筑美

  筑美選  ◎膝頭に川受け止めて鰍獲る         直美
       ○大鰍の頭でつかち逃がしてやる       直美
       ◎鬼やんま川面たたいて旋回す       由美子
       ○瀬音だけの世界赤とんぼがよぎる     由美子
       ◎秋初めデータのでない道を行く       琴美
       ○白昼のパラソル下から見る初秋       琴美

   

[13日・夜] 

 線香の()は振つて消す盆の村
 初秋の()のウインクの未完成
 秋灯(あきともし)ともれば瀬音高くなる
 秋の蛾の三角形が逆立ちに
 茄子の馬片尻上げて湯の街は             直美

 水すつと吸うて川原の石涼し
 川岸の砂乾ききる秋初め
 幼な子の鼻歌風は秋色に
 コスモスのはじめの一輪濃く咲けり
 後蹤いて墓参の道の細くなる
 ぼんやりと口開けてゐる夜涼かな
 線香の火の勢ひよ夏が逝く              由美子
  
 秋初めかじかは指の先にいて 
 初秋の遠くに花火の音がして
 水面を石すべりゆく秋日暮
 父のひげやや伸び出して秋初め
 流木を川に流してみる初秋
 新品の渡り廊下を通る秋
 網かまえ今日は旅行の最終日             琴美

 線香の匂ただよう秋初め
 笹船を見て熱くなる秋日暮
 パチャパチャと水切り石の数かぞえ          筑美


 選句はそれぞれの作品から好きなものに印をつけました。結果は次の通りです。

  直美選  ○川岸の砂乾ききる秋初め         由美子
       ○コスモスのはじめの一輪濃く咲けり    由美子
       ○後蹤いて墓参の道の細くなる       由美子
       ◎流木を川に流してみる初秋         琴美
       ○父のひげやや伸び出して秋初め       琴美
       ○新品の渡り廊下を通る秋          琴美
       ◎線香の匂ただよう秋初め          筑美
       ○笹船を見て熱くなる秋日暮         筑美

  由美子選 ◎茄子の馬片尻上げて湯の街は        直美
       ○線香の炎は振つて消す盆の村        直美
       ○秋の蛾の三角形が逆立ちに         直美
       ◎父のひげやや伸び出して秋初め       琴美
       ○秋初めかじかは指の先にいて        琴美
       ○水面を石すべりゆく秋日暮         琴美
       ◎線香の匂ただよう秋初め          筑美
       ○笹船を見て熱くなる秋日暮         筑美

  琴美選  ◎秋の蛾の三角形が逆立ちに         直美
       ○茄子の馬片尻上げて湯の街は        直美
       ◎幼な子の鼻歌風は秋色に         由美子
       ○後蹤いて墓参の道の細くなる       由美子
       ○線香の火の勢ひよ夏が逝く        由美子
       ◎笹船を見て熱くなる秋日暮         筑美
       ○線香の匂ただよう秋初め          筑美

  筑美選  ◎茄子の馬片尻上げて湯の街は        直美
       ○線香の炎は振つて消す盆の村        直美
       ◎川岸の砂乾ききる秋初め         由美子
       ○コスモスのはじめの一輪濃く咲けり    由美子
       ◎流木を川に流してみ            琴美
       ○初秋の遠くに花火の音がして        琴美


 選句の後にはそれぞれの句についての意見交換をしましたが、当時の記録が残っておりませんので、残念ながらその様子をお伝えすることができません。今までの家族句会の様子を参考に、ご想像いただければ幸いです。

 筑美は無事高校を卒業し、予定通り(?)浪人することになりました。琴美は運転免許を取得するべく只今合宿教習に出かけています。帰って来た頃に句会が出来ればいいのですが…。

 それではまた。

  




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