火の歳時記

NO47 平成20129


片山由美子

 
  【火の歳時記】第12回 「秩父夜祭」

 十二月二、三日には、埼玉県秩父市の秩父神社で絢爛豪華な祭が行われる。京都祇園、飛騨高山祭と並ぶ日本三大曳山祭のひとつで、三百年以上の歴史があり、国指定重要有形民俗文化財の笠鉾二基と屋台四基が曳きまわされる。
 二日は宵祭だが、午後から各町内の屋台が引き出され、愛宕神社境内では屋台歌舞伎を上演する。三日の本祭には、午前中から笠鉾と屋台が市内をまわり、午後七時には神輿を担ぐ御神幸行列を追って秩父神社から秩父公園のお旅所へ向かう。公園入口の団子坂は三十度ほどの傾斜があり、ここを十数トンもの山車を引き上げるのは見ていても力が入る。山車は極彩色の彫刻や幕、無数の提灯で飾られ、「ホーリャイ、ホーリャイ」という掛け声と、「ドドンコ、ドコドコ」と打ち鳴らされる「秩父屋台囃子」に乗って、市街地をゆっくりと進む。
 もうひとつの呼び物は花火である。夜祭に火は付き物だが、これは神社の女神、妙見菩薩と武甲山の男神が、年に一度出会うという伝説に基づき、二神を祝福することに由来するといわれる。尺玉九十二発を含め約五千七百発もが冬空に打ち上げられ、絵巻さながらの豪華さである。底冷えのする秩父の夜だが、今年も十九万人以上の見物客が押し寄せた。

    

  桑枯れて秩父夜祭来りけり          岡田水雲
  秩父夜祭とは聞くだにもあな寒や       富安風生
  秩父夜祭石もて焚火消しにけり       小川原嘘帥
  秩父祭供物の繭の大袋            飯島晴子


 岡田水雲や飯島晴子の句は、かつて養蚕で栄えた土地であることを伝えている。

(写真提供:埼玉新聞)
   

 
 (c)yumiko katayama
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