NO70 平成21年6月2日 片山由美子 |
|||
【火の歳時記】第29回 烏賊釣火 |
|||
烏賊は夜、水面近くにいるので灯を点すと集まってくる。そこで烏賊釣船は夕方から沖へ出てゆき、集魚灯を点して漁を行う。「烏賊釣火」「烏賊火」と呼ばれるその明りは前回紹介した「夜焚」のひとつである。 烏賊釣りの船百灯を掲げ出づ 竹村忠吉 集魚灯にはいろいろな種類があるが、ハロゲンランプなど昼間かと思うほどの明るさとなる。しかし燃料もかなりかかるそうで、ちかごろでは発光ダイオードが使われるようになってきている。 烏賊釣のわが灯ひとつにつゞく闇 米澤吾亦紅 これは珍しく烏賊釣の船からの視点で詠んだもので、ふつうはつぎのような句になる。 船縁の修羅場は見えず烏賊釣火 柳井満智子 |
|||
|
|||
岸からは沖に連なる灯が見え、夏の風物詩となっている。 烏賊釣火遠流の島を囲みけり 吉野勝子 ゆふづつの如くにとほき烏賊火あり 大星たかし 烏賊釣る灯原始の海に連なれり 佐藤あい子 烏賊火より遠き灯のなし日本海 吉原一暁 烏賊釣火同じ遠さに増えにけり 河野青華 明け方は西へと寄りぬ烏賊釣火 松林朝蒼 彼方から見ていると、それが労働の場であることを忘れるほど幻想的に思えてくる。烏賊釣が独立した季語になっている所以であろう。 |
|||
|
|||
(c)yumiko katayama | |||
前へ 次へ | 今週の火の歳時記 HOME |