火の歳時記

NO72 平成21616


片山由美子

 
  【火の歳時記】第31回 キャンプファイヤー

 片仮名の季語のおおかたは昭和になって採用されたものである。夏のレジャーのキャンプはそのなかで比較的古いものといえる。キャンプといえば飯盒炊飯、バーべキュー、そしてキャンプファイヤーに火を欠かすことはできない。

  火を使ふことを習ひてキャンプの子       大橋敦子

 これは学校か、あるいはボーイスカウトのキャンプに初めて参加した子どもだろう。家では家事を手伝ったこともないような小学生が、火を使うことを習ってきたというのはほほえましく、また頼もしい。ひょっとしたら火の熾し方まで覚えてきたのかもしれない。

  父が火を焚きてキャンプの始まりぬ       三輪温子

 こちらは家族のキャンプだ。昨今はキャンピングカーをもっている家もけっこうあるようだが、アウトドア派の父親なら火を焚くことなどお手の物である。キャンプの定番メニューといえばカレーライスだが、ときには釣ってきた魚を焼いて食べるなど、キャンプでしか味わうことのできないものもある。

  キャンプの火あがれる空の穂高岳        加藤楸邨
  キャンプの火燃えて夜となる湖畔かな      中島斌雄


 「キャンプの火」とはキャンプファイヤーのことである。高原や湖畔のキャンプ場ではあちこちのグループが火を焚き始める。火を囲んでキャンプソングを歌ったり、ゲームをしたりというのは、いかにもよき昭和の懐かしさだ。しかしながらつぎのような句もある。

  キャンプの火こころのごとく掻きたてる     加倉井秋を

 何やらくすぶりがちの火のような……。それを敢えて掻きたてているところにストーリーがありそうだ。

 アメリカ映画によく出てくるが、バーベキューのあとで皆が楽しみにしているらしいのがSmore(スモア)である。焼きマシュマロのことで、燠になった火にマシュマロを串に刺したものをかざして焦げ目をつけて食べるのだ。カリッとした中からマシュマロがとろりと出てくるというのが子どもたちに大人気らしい。グラハムクラッカーの間に板チョコと一緒に挟んで食べるというのも絶品であるとか。「Smore」というのは「Some more」のことだと聞いて納得。いかにもアメリカ的な味がしそうだ。



   

 
 (c)yumiko katayama
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