NO76 平成21年7月14日 片山由美子 |
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【火の歳時記】第35回 花火 |
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もう一曲、花火の音楽を。ドビュッシーはずばり「花火」という曲を作っている。「前奏曲集第二巻」の第十二曲、つまり最後の曲だが、フィナーレを飾るにふさわしい華やかさで、火花が散る様子を思わせる跳躍を散りばめるなど難易度も高い。ドビュッシー自身が書き記しているわけではないが、これは独立記念日に打ち上げられる花火に着想を得たものではないかと思われる。独立記念日には花火がつきもので、前夜祭からフランス各地で花火が打ち上げられ、十四日当日、エッフェル塔の下では大掛かりな花火がパリの空を彩るのである。「前奏曲集」はいわゆる標題音楽ではないので題は副次的なものではあるが、「花火」があきらかに独立記念日を意識したものであることがわかるのは曲の最後である。突然、遠くからかすかに聞こえてくるかのような「ラ・マルセイエーズ」が奏でられる。おまけのようなこのメロディーは悪戯っぽくもあるが、ドビュッシーのメッセージとして受け取るべきだろう。 独立記念日といえば七月四日、アメリカの花火は相当派手らしい。日本の花火大会のように美を競うというものではなく、独立記念日のイヴェントとして三十分から一時間にわたり、とにかく続けざまに打ち上げられるのだとか。Fireworks という英語がそれを表している。日本では花火玉がヒューとが上って行った後、ドドンドンだのパンパンだのという音も花火らしさのひとつだが、アメリカの花火はヒューを楽しむようなものではなく、一斉射撃と思えばよいだろう。そのかわり、音楽によって盛り上げる演出がなされるとのこと。国歌からポップスまで、音楽好きの国民性を反映している。 独立記念日の花火大会は全国一万箇所で催されるというのだから、本当に広い国だと思わずにはいられない。アメリカでも家庭で行う花火もあるらしいが、火災や事故が起きやすいので、自粛するよう強い呼びかけがあるとのこと。庭花火といっても、日本の手花火の類ではないのだろう。 花火というのは、華やかであるだけに終ったあとに虚しさを感じてしまう。花火の俳句が意外なほどにさびしいのはそんな背景があるからだろう。 大空のうつろに割れし花火かな 前田野生子 大花火沖の暗さを見せにけり 平松萩雨 その次の少し淋しき花火かな 山田弘子 死にし人別れし人や遠花火 鈴木真砂女 |
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(c)yumiko katayama | |||
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