感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第4回 2009/02/22

 原句  蓑虫のさがりし枝の芽吹きけり

 蓑虫は秋の季語ですが、早春にもみかけることと思います。この句の季語は「芽吹き」で春ですから、季重なりとはいっても、問題ではないと私は判断します。それよりも、眼前の景に心が動き、一句にするということが大事です。作者は、枝に下がった蓑虫に気づき、次にその枝の芽吹きに気がついて、感動したのでしょう。春の訪れを喜ぶ気持ちがよくあらわれた一句です。
 この句で少し気になるのは、「枝の」の助詞「の」です。
 作者はここを「も」にしようか、「の」にしようか迷ったかもしれません。これでいいような気もしますが、「の」が二つ続くこともあって、やや苦しい表現にも感じられます。
 「も」とすると、開放的な響きになり、より詠嘆が強くなる気がします。その分景色もひろがってゆくのではないでしょうか。

 添削例 蓑虫のさがりし枝も芽吹きけり

 


 原句  芝の庭走り廻る子クロッカス

 この句は形の上でいわゆる三段切れになっています。
 ぶつぶつと切れて、俳句の韻律が生かされていない状態です。
情景としては、いきいきとしたところを捉え、クロッカスの取り合わせもよいと思います。
 そこで、上五と中七をなだらかにつなげてみましょう。「中庭を」とするのも、芝生が想像できるので一案だと思いますが、このいい方もできると思います。

 添削例 芝の()を走り廻る子クロッカス


 
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