いしだ |
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第7回 2009/03/15 | ||||
原句 吟行での嘱目で、作者は俳句歴の長いベテランです。 「葦の角」は早春の季語。葦の芽のことで、つんつんと尖った葦の芽吹きがまるで角のように見えるというので、こう呼ばれています。水面に伸び出した葦の芽吹きは美しく、また面白い季語でもあるので、よく俳句に詠まれます。 作者は、通りがかりに琵琶の音をきいて、しばらく足を止めて聞き入ったのでしょう。いい出会いです。 気になったのは季語の取り合わせです。 葦の芽吹きは、たしかにその日に見つけた季語の一つでした。作者はほかにも様々な発見をしましたが、なかで一番印象に残ったのが葦の角だったのです。 ことがらに季語を取り合わせるのは俳句の一つの手法であり、そこから思いがけない連想の世界がひろがってゆく面白さがあります。 作者は一句は水の上に琵琶の音色が響き渡ってゆくところを描きました。これでいいような気もします。けれど、なにかちぐはぐな感じがして考え込んでしまいました。 葦の芽吹きとの取り合わせは実際の景として、そのままでいいのですが、「葦の角」という言葉の持つ比喩の意味合いが、一句の伸びやかさを打ち消しているのではないでしょうか。この言葉の印象が強すぎるのでは。 それこそ「葦の芽や筑前琵琶を復習ひをる」などと詠んだ方が、拙い句でも琵琶の音が聞こえてくるような気がするのです。もう少し考えて、葦の芽そのものをいうのではなく、その芽吹きの季節を言ってみたらどうなるでしょうか。 添削例 復習ひをる筑前琵琶や葦芽吹く 原句 花びらの流れる方へ春の鳥 一読、桜の花びらが風に吹かれてゆくなかを、鳥たちもまたとんでゆくという情景だろうと思いましたが、「花びら」も桜の花びらなので、春季になります。それはともかく、作者にたしかめたところ、実はこれは水辺の景であって、水面を花びらが流れ、鴨も同じ方へ流れるように泳いでいった景だということでした。 それなら、「春の鴨」とすれぱ、間違いなく情景が浮かびます。けれど季重なりですから、もう少し考えてこう直してみます。「流れ」をリフレーンのようにしてつかってみました。 添削例 花びらの流れる方へ鴨流れ |
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(c)kyouko ishida | ||||
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