感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第14回 2009/05/03   

  原句  みどり児の母へよちよち柳の芽

 愛らしい句です。
 けれど、もう少し俳句らしい表現を試みてみましょうか。
 みどり児というともっと小さなはいはいくらいの赤ちゃんを想像しますので「幼子」に。中七の「よちよち」は、小さな子の歩みとして常套的な擬音語ですから避けた方がいいと思います。

 添削例1  幼子の母へ歩める柳の芽

 幼子を「幼い者」という意味で「幼き」ともいいます。

 添削例2  幼きの母へ歩める柳の芽
 
 こうしてみると上五の助詞から中七へのつながり方が曖昧なようで気になってきました。この場合の「が」という助詞には「こんなに幼いのに」という詠嘆もこもります。

 添削例3  幼きが母へと歩む柳の芽

 

  原句  亀鳴くやまづ親のことたづね合ひ

 「亀鳴く」にはとぼけたような味わいもかんじられますが、こうしてみると春の朧の雰囲気をよく伝えてくる季語です。
 この句、基本通りのオーソドックスな形なのですが、どこか間延びしています。
 簡単にひっくり返してみます。ずいぶん感じが変わると思います。
 こうすると取り合わせとしての味わいが強くなります。


 添削例  亀鳴くやまづたづね合ふ親のこと

 

(c)kyouko ishida
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