感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第16回 2009/05/17   

  原句  さんさんと卯の花白く咲き匂ふ

 夏の初めに咲く卯の花は、なにか懐かしく胸がきゅんとなるような思いを誘う花です。よい匂いがして、いかにも夏らしい清々しさもあります。
 この句は、その卯の花を、なんのてらいもなく率直に見たとおり詠んでいます。
 「さんさんと」という描写は「咲き匂ふ」にかかる形で、作者の心持ちもよく伝わってきますし、新鮮な表現になっています。
 ただ、「さんさんと……白く咲き匂ふ」とみな卯の花の描写ですから、内容は単純で、描写はやや丁寧すぎるように感じました。
 そのために読者の想像のひろがりも小さくなります。
 少し省略してみましょう。卯の花は白いというのはいわずもがなです。
 切字をつかってきりっとした表現になるかと思います。

 添削例  さんさんと卯の花の咲き匂ひけり


 


  原句  鳥遊ぶ卯の花垣に露ひかる
 
 卯の花牆に朝露が降りているのでしょうか。美しい景です。
 ただ、一句に抑揚がなく少々散文的かと思われます。
 そこで、こう直してみます。下五が連用形になると、上五での切れが強くなります。

 添削例  鳥遊ぶ卯の花垣に露ひかり



 水平線

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