感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第17回 2009/05/24   

  原句  児らの列帽子とりどり花空木(はなうつぎ)

 空木は夏を告げる花の一つです。「卯の花」と呼ばれることの方が多いかもしれません。庭木としても親しまれて「卯の花垣」などと詠まれることもあります。あふれるように咲く真っ白な花は、懐かしさをさそうようです。
 この句は、遠足か、野外授業などの情景を写生したものでしょう。白い花垣を子どもたちが列を組んで賑やかに通ってゆく様子が浮かんできます。
 ただ、この句は形の上でまず三つに切れてしまっていて、調べがたどたどしくなっています。
 また、「児らの列」「帽子とりどり」は同じ所を漠然ととらえていて、とりとめのない報告になっています。
 「帽子とりどり」といっているのだから、「列」は省略してもよいのではないでしょうか。

 添削例1  子どもらの帽子とりどり花空木

 あるいはきちんと列をなして進んでゆくところを強調したいのなら「帽子の列」といういい方も考えられます。

 添削例2  子どもらの帽子の列や花空木

 ここで、もう一度句を見直してみます。この句では「花空木」が取り合わせとして無造作に置かれていますが、そもそも作者の感動はどこにあったのでしょうか。もう一つの例として、季語の卯の花に詠嘆の切字をつかってみましょう。「児」は「子」としておきます。あまり目移りしないようにして、いちばん言いたかったことをきちんと言い止めることを心がけてみてください。

 添削例3  卯の花や子等の帽子のとりどりに

 


 水平線

(c)kyouko ishida
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