感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第18回 2009/05/31   

   原句  青梅の洗ひ上げたる香かな

 梅雨の頃には梅の実が大きくなり、収穫して梅酒の仕込みをしたり、干して梅漬けをつくったりします。青梅は夏の季語、梅酒や梅干も夏の季語になっています。
この句は「青梅の」が「香」にかかるので、間に「洗ひ上げたる」を説明のように付け足したように見えます。自然な流れとしては、こうなるのではないでしょうか。
青梅を洗ひ上げたる香かな
或いは、あえて破調にして梅の実の香に感動を覚えたということを強調してみてもいいかもしれません。

  添削例  洗ひ上げたる青梅の香かな

 

     原句
  親切の笑顔となりしさくらんぼ

 作者自身が何か親切な行為を受けて、思わずにっこりした、という場面でしょう。さくらんぼがふさわしい内容です。ただ、「親切の笑顔」と読めてしまいますので、やや句意が曖昧になっています。
 また、「なりし」の「し」は、助動詞「き」の連体形で、この場合は過去を回想する意味になります。その分一句の臨場感は淡くなります。
 ここはもう少し単純に、過去完了の形で感動を表現してみましょう。

  添削例  親切に笑顔となりぬさくらんぼ

 


 水平線

(c)kyouko ishida
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