いしだ |
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第20回 2009/06/21 あ | |||
原 句 薔薇は夏の季語です。五月から六月ごろにかけて、さまざまな種類の薔薇が人々を魅了します。牡丹や菖蒲よりも身近に楽しむことのできる花ではないでしょうか。 彩りのゆたかな薔薇の中で、作者は迷わずクリーム色の薔薇を買い求めました。入院している友の好きな色なのでしょうか。なにか思い出のある薔薇なのかもしれません。「抱きて」で、たっぷりの薔薇の花束と、それを大切そうに抱える作者の姿が見えてきます。 純白とは違う、やわらかくボリュームのある色合いは、紅色や薄紅色の薔薇の華やかさにも負けないでしょう。この句には、それだけのドラマを思わせる力があると思います。 この上五の字余りも、薔薇の重さを感じさせて味わいがありますが、少し残念なのは、一句の叙し方が散文的なためやや報告調にも感じられることです。 俳句は短い定型詩ですが、十分にドラマティックな表現ができます。 添削例1 友見舞ふクリーム色の薔薇抱き 動詞を減らしてこんな形も考えられます。これだと薔薇に焦点が移ります。 添削例2 友見舞ふためのクリーム色の薔薇 原 句 こんな回想の場面は、誰にでもありそうで、共感を喚ぶ句だと想います。 この句も散文的な表現で報告的になっています。動詞を一つ省いてみましょう。言いさしてとどまったような表現に、まるで薔薇の香りのような余韻が籠もるかと思います。 添削例 薔薇散つてふつと昔の友のこと |
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(c)kyouko ishida | |||
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