感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第23回 2009/07/12   


  原 句  青芝の水留めゐる真珠光

 青芝とは夏の青々とした芝生のこと。
 この句は、芝生に水の粒が真珠のようにかがやいている様子をいっています。清々しい夏の朝の景でしょうか。
 「真珠光」という表現は、想像はつくのですが、ここではやや唐突です。また、「水留めゐる」というのは、露なのか、雨の粒が残っているのか、ちょっと迷うところです。そもそも水を留めるとは小さな水の玉にはふさわしくありません。

  添削例1  青芝に真珠のやうな水の粒

 ひとまずこんなふうに直してみましたが、美しい比喩を使っているものどうも説明的に思えます。いっそのこと「真珠」という比喩を省いてしまってはどうでしょうか。

  添削例2  青芝のとどめてをりし水の粒

 動詞も省きましょうか。いちめんに水玉がきらめきます。

  添削例3  青芝の先ことごとく水の玉


 


  原 句  小流れの闇に蜘蛛の囲仕掛けをり

 蜘蛛は夏の季語です。
 「仕掛けをり」は面白い表現とも感じられますが、ここはもう少しひいて描写に徹してみます。平凡であってもそのほうが読者の想像を自由にします。

  添削例  小流れの闇に蜘蛛の囲かかりをり

 
  
 水平線

(c)kyouko ishida
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