感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第25回 2009/07/26   


  原 句  打ち水やアスファルトに風を呼ぶ

 打ち水は夏の風物詩といえます。熱を持ったアスファルトにさっと涼しい風が立つ感じがとてもよくわかります。都会のちょっと下町の風情も感じられるかもしれません。
 ただ、この句は中七が字足らず。作者は「ァ」という促音を一音に数えたようですが、「ファ」で一音です。
 ときには破調として案外字足らずや字余りで俳句をつくることもありますが、聞いてみると、意外に気づかないでつくってしまうかたも多いようです。
 この句の場合は内容がシンプルで明快ですから、言葉を入れ替えて工夫してみましょう。アスファルトは五音ですから、下五に。

  添削例1  打ち水や風を呼びたるアスファルト

 上五で切れてしまうと、取り合わせの句のようになってしまいますが、意味の上では切れないわけですから、

  添削例2  打つ水が風を呼びたるアスファルト

 助詞「が」は「の」でもよいかもしれません。

  添削例3  打つ水の風を呼びたるアスファルト


 

  原 句  木漏れ日に山鳩遊ぶ夏木立

 木漏れ日のちらちら揺れる地面を山鳩が歩きまわっている情景を想像させます。この句では「夏木立」が季語。木漏れ日も山鳩も季語ではないので、季重なりではないのですが、「木漏れ日に山鳩遊ぶ」で一句の情景は見えてきますから、そこに「夏木立」はやや重複感があると思います。
 季語「夏木立」を生かすとしたら、

  添削例1  山鳩の下りて遊べる夏木立

 木漏れ日を生かすならば、

  添削例2  木漏れ日に山鳩遊ぶ晩夏かな

などそのときの時候の言葉を入れてもいいでしょう。
 



 水平線

(c)kyouko ishida
前へ 次へ   今週の推敲添削   HOME