感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第26回 2009/08/02   


  原 句  ゴムの木の幹いちめんの青蘿かな

 「青蘿」は青々と茂った蔦のこと。蔦の青葉・青蔦は夏の季語ですから、青蘿はその傍題になるでしょう。
 この句は、見つけた情景を写生しています。「いちめんの」に驚きがあり、作者が蔦の生命力に目を瞠っていることがよく伝わってきます。ただ、気になるのは、「青蘿」という言葉です。言葉の面白さはありますが、この句の場合は漢語的な表現がいやに目立っているように思いました。
 ふつうのいい方ではどうでしょうか。

  添削例  ゴムの木の幹いちめんの蔦青葉


 

  原 句  水落つる音の大きな緑蔭に

 涼しい木陰に小さな滝が落ちているのでしょうか。この句を見たときに大きいのが音なのか、緑蔭なのか、少し迷いました。「音の」を「音が」と置き換えてみると、句意はわかりやすいようですが、大きな木の蔭に水音がしている、というだけだと今ひとつ具体性に欠けるようにも思います。
 作者にたずねると、実は水音が大きかったとのこと。作品としてはその方が具体性があるのではないかと思います。具体性は臨場感につながります。
 「緑蔭に」の「に」があると句意は不明瞭になりますからとります。

  添削例  水落つる音大いなり木下闇


 水平線

(c)kyouko ishida
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