いしだ |
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第33回 2009/10/06 あ | |||
原 句 霧雨は、霧のようなこまやかな雨のことで、霧の傍題とされます。 この句は、中七の「降りみ降らずみ」という情緒のある古語を使って霧雨に見え隠れしている人の姿を描いています。「遠き人」にちょっと思わせぶりな感じがあって、心を惹かれました。 ただ、霧雨そのものが降っているのか止んでいるのか曖昧な雨ですから、重複感があります。霧雨ではなく、ふつうに秋雨でもいいでしょう。 添削例1 秋雨や降りみ降らずみ遠き人 この句の場合、上五の「や」は切字の「や」ではなく、助詞「の」と同じ働きをしていますが、次のようにすると、雰囲気がかなり変わります。一つの作例として比較してみてください。 添削例2 秋雨や降りみ降らずみ人遠く 原 句 腕白坊主の姿がふっと霧に紛れた情景で、幻想的な情景です。 御蔵島は「みくら」と縮めて読みます。俳句では、「富士山」を「ふじ」、「利根川」を「とね」などと、親しみを込めて呼びます。 この「腕白」ということばにやや違和感を感じ、考え込んでしまいました。「少年」か「男の子」の方がいいかと思います。 というのは、「腕白」ということばの持つ通俗的な感覚が、どうもいただけないのです。できるだけ素に近いことばの方が、一句の鑑賞を妨げないのではと思います。 添削例 少年が御蔵島の霧に包まるる 原 句 霧は秋の季語ですが、四季を通じて詠まれるものですから、「花」と出てきたときに、桜のことだろうかと一瞬戸惑います。 桜として鑑賞しても一句は成立してしまいます。 秋の句とすれば、作者は高原植物を詠んだのかもしれません。具体的に植物の名を入れてもいいでしょうし、山に執さずにこんないい方も出来ます。 添削例 野の花も人もたちまち消して霧 |
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(c)kyouko ishida | |||
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