感動を表現する推敲の仕方
石田郷子  いしだ


第37回 2009/11/03   


  原 句  萩刈つて明るく寂しき庭となり

 この句の季語は、「萩刈る」です。
 花の終わった萩は、根元から刈っておくと、次の春にはさかんに芽をだします。萩は枯れた木の枝から芽吹くのではなくて、根元から発芽して新しい枝を伸ばします。もともと山野に自生しているものなので、刈り取らなくても枯れた枝の根元から芽吹いてきますが、庭園などでは、晩秋、花が終わった頃に、庭師が萩を刈る光景に出会うこともあるでしょう。
 この句の作者は、自宅の庭の萩を手入れしたのでしょう。萩の茂みをさっぱり刈ってしまったあと、ああ明るくなったなあと秋の日差しに目を細め、また、冬の近づいてくることを感じたでしょう。春夏秋とさまざまに彩りを見せてくれた庭も、冬になれば花が少なくなって、ちょっぴり寂しくなってしまいます。
共感できる句です。
 この句ではまず中七の字余りが気になります。「明るく寂しき」は少々説明しすぎかもしれません。

  添削例  萩刈つて明るき庭となりにけり

 これだと写生と言うには弱く、単なる報告。

  添削例  萩刈つて寂しき庭となりにけり

 主観を述べた句ですが、作者の気持ちはこもったと思います。
 言葉をしぼるだけできりっとした一句になります。


 水平線

(c)kyouko ishida
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