2012/05/17 |
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第十ニ回 蛙を餌にザリガニ捕り |
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田川で捕れる魚貝類の中でも、これほどの量が捕れて、面白く、しかも食糧の足しになったものはほかにない。それはザリガニである。群馬で子供時代を過ごした私は、夏の放課後のほとんどの時間を、この漁にうつつをぬかした。 ざり蟹のからくれなゐの少年期 野見山朱鳥 まさにこんな日常だった。 私と同じように疎開していた仲間の多くは、糸の先に まず五、六十センチの棒の先に、糸を この蛙、地面にたたきつけると、キューと一声鳴いて死ぬ。ここからが残酷きわまりないのである。脚を折り、むけたその個所から皮を頭に向けて その脚を糸の先に括り、ザリガニのいそうなよどみに垂らすとすぐ、両方の 子供の間で「まっかちん」と呼ぶ、小型の伊勢 これを持って帰ると、母は決まって「そんなものを、また!」というが、ついでに我が家の単純な食べ方を紹介する。頭を取り、尾の殻を外すと、大きめのザリガニでも、大人の親指ほどしかない。馬穴一杯のものが、小どんぶり一杯ほどになる。冷蔵庫などない時代だから、夕飯前に手早く処理する。これに塩を振り、どこの家にもあった素焼きの 大人になって知ったことだが、日本固有のザリガニは、主に北海道と北東北に かつて、『季語 語源成り立ち辞典』(平凡社)を書く折に調べたところ、アメリカ・ザリガニが、日本で初めて見つかったのは昭和の初めで、その場所たるや、神奈川県の大船辺りだと、資料にはある。その後、食用としての評価が高く、アメリカから輸入されたとあるから、その子孫が、あれほど田川に繁殖したのだろう。 ところが、昭和二十年代の後半、防虫剤、DDTの普及で、私達子供の前からザリガニは消えた。 |
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(c)yoshihiro enomoto |
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