石田波郷の100句を読む


             2013/11/12


《20》

            石田郷子





  蜩や草田男を訪ふ病波郷   波郷

 昭和22年作。前回の「西日中…」の句で触れたが、「兼ねて依頼してあつた五十句を貰ひに」草田男を訪ねた折りの句である。「現代俳句」掲載の原稿だろうか。「病波郷」には、少しおどけた感じがあり、親しさも伝わってくる気がして、ぶらりと訪ねたような印象を受ける。草田男の住まいは吉祥寺。鬱蒼と茂った武蔵野の林に蜩の声は凄まじいほどだっただろう。
 用事が済んで草田男夫人にビールをふるまわれ、その足で座談会に出席し、そのあと酒とウィスキーを飲んだが疲労感がひどくて中座したと書いている。
 この日を境に自覚症状も重くなり、病床に就くようになった。







(c)kyouko ishida


前へ 次へ   今週の1句   HOME