石田波郷の100句を読む


          2013/12/17


《24》

        石田郷子





  たばしるや鵙叫喚す胸形変   波郷

 昭和24年作。療養所に入った波郷は、医師から手術をすすめられた。

  夜半の雛肋剖くとも吾死なじ

は、その時、医師の話に「心のはづむやうな思ひ」がして作った句である。
 手術は秋になって行われた。療養所では俳句が盛んだったようである。手術を控えた波郷を見舞う人も多かったようだ。期待をかけて受けた手術の体験を波郷は綴っている。手術の終わるのを待っていた人の中に、秋桜子もいた。
 「胸形変」とは、肺を結核に冒されたため肋骨を切り取り、胸の形が変わることをいう。

  鰯雲ひろがりひろがり創痛む
  麻薬うてば十三夜月遁走す

は術後の痛みを詠んだもの。




(c)kyouko ishida

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