らくだ日記       佐怒賀正美
【作品29】
2009/03/13 (第463回)

 八束には珍しい「あやかし」出現の句。この句は「あやかしをつつじは空に/淵瀬鳴る」というように中七で切れる。前半は「あやかしをツツジは空に見上げながら」の意であろう。ツツジ山のような風景を思い起こしてもよいが、ツツジの群れ咲いているそのいきれからあやかしが空に立ち昇っていく。ツツジ山には清冽な川が流れていて、そこからは淵瀬の音が届いてくる。文体的に切れが少し分かりにくく、多少分散的な句のようにも思えるが、志向したイメージは新しい句ではないか。「あやかしをつつじは」まではひらがなでのびやかに描き、「淵瀬鳴る」は漢字を用いてぐいと重心を落としたように感じさせる。





     
 














     
   
   
   
   
     
『春風琴』平成9年作 
(C)2007 Masami Sanuka
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