らくだ日記       佐怒賀正美
【作品32】
2009/03/18 (第466回)

 この句には、一見終末風景みたいな侘びしさが漂う。風の吹く間に鉦叩が転がるようになりながら鉦を叩いているというのだ。ただ、「鉦叩風に吹かれてころがりぬ」とはやはり味わいが一つ違う。「ころがりて」と上五にいきなり出したために、軽い滑稽感が生まれているのではなかろうか。風が吹く中に、自らの「枯れ」を楽しむかのように「ころがりて」遊んでいる。ほんとうは踏ん張れる力が希薄になってきているのかもしれないが、句の上では、飄々として鉦を叩いている某上人のような風情が出てくる。そこがこの句の面白いところではないか。八束の晩年の、風狂の一風景とでも言おうか。

     
 












     
   
   
   
   
     
『春風琴』平成9年作 
(C)2007 Masami Sanuka
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