![]() 2013/07/25 |
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phot by hogeashi | ||||
俳句を始めて何年かたった頃、「極限」ということにこだわった時がありました。 例えば、死刑囚に俳句の指導をしていた人がまとめた、名もなき死刑囚たちの句集。 刑が執行される日の朝、 綱汚すまじく首拭く寒の水 と詠まれた句があり、今も鮮烈に脳裡に焼き付いています。 日本の「極限」の風景のひとつであろうと思い、極寒の宗谷岬に立っていたこともあります。高野山、比叡山、恐山の、三大霊場を巡ったのもこの頃です。 そして、それまで登山とは全く無縁だったにもかかわらず、富士山頂に立ってみたいという思いが日に日に昂まり、家族から無謀と謗られながらも、一人で決行することにしました。 ちょうど今から10年ほど前のことです。 今年は世界遺産登録で、空前の富士登山ブームです。先日の山開きのテレビ画像を見ていますと、まるでハイキングの延長のつもりのような軽装の登山者が見られます。 富士山は日本一高い山です。相応の覚悟と準備が必要です。 50歳半ば(当時)、しかも登山経験皆無という状況ながら、1回の登山で富士山頂に立った体験を書いてみたいと思います。 まず「富士登山ツアー」を企画している旅行会社全てからパンフレットを取り寄せました。しかし、「登山中級以上の人対象」と但書が付いているツアーばかり。何とか、と思い旅行会社それぞれに問い合わせましたが、どこも登山経験皆無の人などとんでもない、と断わられました。 やはり初心者がいきなり富士山に登るのは無理かとあきらめかけた時、何と「はとバス」の「子供からお年寄りまで」(もちろん初心者も)OKという「富士登山ツアー」があるのを見つけました。さっそく申し込むと、詳しい説明書が送られてきましたが、それを読むと、初心者には疑問続出でした。 単に「リュック」と書かれていますが、世の中にはさまざまのリュックなるものが売られています。大きさは? 形体は? 「レインコート」これもさまざまです。どれを選べばいいの? 服装や着替えについて、「なるべく綿でないもの」と書かれていますが、これもいまいちよくわかりません。 「水・携帯食料」これも何を、どのくらいの量を用意すればよいのか見当もつきません。他のものについても迷うことばかりでした。 そこで、説明書を片手に商店街のはずれにある登山用品専門店に飛び込みました。そこは、毎週のように登山に出かけている、山好きのご夫婦の店です。 登山経験皆無でいきなり富士登山に行くという私に、最初はあきれ顔だったご夫婦も、本気だとわかると実に親切に何から何まで揃えてくださいました。 登ってみてわかったことですが、ツアーの説明書には書かれていないものでも、このご夫婦から必要になるから持って行ったほうがいいと言われた物は全て必要でした。水、食料についても、本当に適切な量でした。 これらの「物」については登山の説明の中で折々に書くことにします。 「物」以外でもさまざまなアドバイスをいただきました。 下界とは違って山の天気は変わりやすく、天候が急変した場合には「登山中止命令」が出され、体調、装備ともに万全でも登頂できないケースがままあるということです。 昔から山の天気が最も安定するのは「梅雨あけ10日」と言われており、梅雨あけ宣言が出てから10日以内に登るとよい、と言われました。 土曜日、日曜日は「富士山渋滞(登山道に人が連らなって渋滞し、思うように前進できないこと)」が起こりやすく、快適な登山をするためには平日がよい、とも言われました。 また、できれば富士登山の日より1週間くらい前に3000メートルに近い山で初心者向けのコースを探し、一度山に登っておくとよい、と言われました。そうすれば1週間くらいは体が「山」を覚えているので、富士山頂へ到達できる可能性が高くなる、ということでした。 もちろん、全て指示通りにしました。 「はとバス」に連絡をして富士登山の日程を変更し、「初心者向け登山コース」の予約を入れました。 なかなか富士山に到達しませんが、いま少しお待ちください。 初心者向けコースで選んだのは木曾駒ケ岳の登山でした。木曾駒ケ岳は標高2956メートル、木曾山脈の主峰です。標高2600メートルあたりには有名な千畳敷カールがあり、高山植物のお花畑です。 このコースは、山の麓からロープウェイで一気に千畳敷カールまで登り、そこから片道約2時間の登山で山頂に着くという、初心者向けの楽なコースでした。 高山植物の咲き乱れる千畳敷カールの美しさには息をのみましたが、長くなりますので省きます。 標高2800メートルあたりから酸素が薄くなりはじめましたが、その状態を言葉で説明するのは難しく、やはり体験するのが一番です。あの店のご夫婦の「体に覚えさせる」という言葉がよみがえりました。 山頂に近くなるともはや美しい高山植物はほとんど無く、ところどころに |
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![]() 〔千畳敷カール〕 |
![]() 〔駒ケ岳頂上より〕 |
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さて、木曾駒ケ岳の登山から5日め。 いよいよ富士登山に出発です。 |
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