「17音の小宇宙―田口麦彦の写真川柳」
 
第16回(最終回) 2009/10/09



わたくしのピアノを鳴らす人はだれ
    



 いまの世の中、きわめて現実的。
ラブゲームの基本を心得ていなければ恋の成就もかなわない。
人と人との触れ合いが難しい時代、「婚カツ」もまた戦略が必要となってきた。
「婚カツ」とは就職活動を「就カツ」と呼ぶように、より条件のいい相手に内定(婚約)をもらうための結婚活動のことである。
ただ、この「婚カツ」という略語、いまの風潮ではあろうが好ましいとは言えない。「人間関係までゲーム化してしまえ」という魂胆が見えるからである。
 ともあれ、松坂慶子さんがお母さん役になって好演した「婚カツ・離カツ」というNHKドラマ。現代の世情を写していておもしろかった。
 背景には価値観の多様化に伴う結婚観の変化がある。
読売新聞社が2005年に行った「結婚観」に関する全国世論調査(面接方式)で「結婚しなくても一人で幸福」と思う未婚女性が73%に達していた。前回調査よりもさらに多くなっている。
 結婚という制度への社会認識が変わってきたのであろう。女性の社会進出、経済的地位の向上よって「自分が主役の人生を生きたい」という思いが拡がってきても不思議ではない。結婚しなくても恋愛はできるし、勇気があれば子どもだって生んで育てられる。ただ欲しいのは自分を理解してくれる相手。
 「心の中のピアノ線を鳴らしてくれる人はきっといる」そう信じて生き続けている。



(c)Mugihiko Taguchi

田口麦彦(たぐちむぎひこ)

1931(昭和6)年アメリカ生まれ。川柳作家・コラムニスト。
熊本県川柳協会会長、川柳噴煙吟社副主幹。日本大学法学部卒。
(社)日本文藝家協会会員、(社)全日本川柳協会常任幹事、西日本新聞「ニュース川柳」選者、NHK熊本文化センター講師。第18回三條東洋樹賞、第22回熊本県文化懇話会新人賞等受賞。
『三省堂現代川柳必携』にて第23回熊日出版文化賞受賞。著書に『川柳とあそぶ』(実業之日本社)『元気が出る川柳』(新葉館出版)『現代川柳必携』『現代女流川柳鑑賞事典』(三省堂)『現代川柳入門』『川柳表現辞典』『川柳練習帳』『笑福川柳』『地球を読む―川柳的発想のススメ』(飯塚書店)など。
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